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最高裁判所第一小法廷 昭和26年(れ)899号 判決

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人小泉英一、同桝井雅生の上告趣意について。

論旨第一点乃至第四点はいずれも単なる訴訟法違反の主張に帰し、名を憲法違反に藉りるにすぎないものであり、同第五点は量刑不当の主張であるから、論旨いずれも明らかに刑訴四〇五条に定める上告の理由にあたらない。そして論旨第一点に主張する常盤豊次郎名義の盗難被害顛末書は本件別冊記録(昭和二三年(公)第五五六号の四二丁)に編綴されているのであるから、原判決を以て所論の窃盗に関する被害者の証拠なくして窃盗の事実を認定した違法のものとの論旨はその前提事実を欠き採るをえないし、論旨第二点に摘示する第二事実の判示はその判文自体から、他人の所持を侵害しは事実を認定した趣旨であること多言を要しないところであるし、論旨第三点に主張する賍物が盗品であるか詐取された物であるかは、賍物罪の成立に影響のない事実であるから、所論判示に本件D・D・T油液が賍物であることを示せば足り盗品であることまで示すのは要はないし、論旨第四点に主張する判示「D・D・T油液」は、物の名称であるから所論法条に違背するとはいえない。従って原判決には所論のいずれの違法も存しない。また論旨第五点の量刑不当の主張も認められない。されば本件には刑訴四一一条を適用すべきものとは思料されない。

よって刑訴施行法三条の二刑訴四〇八条に従い全裁判官の一致で主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 沢田竹治郎 裁判官 真野 毅 裁判官 斎藤悠輔)

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